このゴールデンウィーク、家の中にいる時間が増えたので、気合を入れて洋書を読んでいます。
そのうちの一冊、A Tale for the Time Beingを読了したのでレビューしてみます。
著者のルース・オゼキさんは、アメリカ生まれ。両親は日本人で後に日本に戻られたそうです。アメリカと日本の両国の大学で教育を受けていて、小説を書く前はアメリカで映像作家として活躍されていたようです。
小説を書き始めたのは40歳を超えてから、また、45歳から禅に打ち込み、2010年には曹洞宗の僧侶になるなどとても多彩なバックグラウンドをお持ちになっています。
物語はカナダ沿岸の島に住む作家ルースが、海岸で見つけた弁当箱に入っていた日記を見つけることから始まり、日記の所有者である東京に暮らす16歳の少女ナオの日記を読みながら、現在のルースの物語と、ナオの日記の物語が交互に進んでいく構成になっています。ナオの日記には、ナオが受ける壮絶ないじめと、自殺願望のある父、また、104歳の僧侶である祖母との物語が展開され、全体を通して決して明るい話ではないのですが、道元の言葉や禅の思想が物語に救いや希望の光を見せてくれて、流石は曹洞宗の僧侶にまでなった作家の経験が活かさせていると思いました。物語は何か村上春樹さんに通じるファンタジーな部分もあり、読後は爽やかな印象が残りました。
英語は比較的プレーンな英語で書かれているので、分からない単語は飛ばしながら読んでもストーリーは追っていけると思います。
最後に物語で引用されていた道元の言葉で締めたいと思います。
To study the Way is to study the self. To study the self is to forget the self. To forget the self is to be enlightened by all the myriad things.
道を学ぶことは自己を学ぶことです。自己を学ぶことは自己を忘れることです。自己を忘れることは無数の事柄によって悟りを開くことです。
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